過酢酸は英語で「Peracetic acid 略称:PAA」で表記される、無色で酢のような刺激臭をもった殺菌料です。
1900年代初頭より海外で殺菌消毒薬として使用され、特に芽胞菌を含む細菌、真菌(カビ・酵母)、ウィルスといった幅広い病原微生物に対して効果があることから、近年世界で注目されている殺菌剤です。
上記の特徴から、海外では生鮮野菜の洗浄や食肉の表面殺菌のような食品衛生分野や、内視鏡に代表される病院内機器洗浄、幅広い抗菌スペクトルよる畜産施設の衛生管理等幅広い分野で用いられてきました。
また塩素系消毒剤と比較した場合、
・消毒副生成物(トリハロメタン等)を生成しない点
・有機物と接触しても濃度がほぼ減衰しない点
・放流先生態系への毒性影響が少ない点
等のメリットから、欧米では下水消毒剤としての検討や試験的導入も始まっています。
他にもワイナリー(醸造所)では、
・樽(木材)との反応による異臭が生じない点
等からワイン製造現場での衛生管理に広く使用されています。 このように過酢酸の持つ特徴から、今後も幅広い分野での導入が期待されています。
日本では、古くから過酢酸を含む消毒液が「医薬品」として承認されているため、内視鏡や透析機器の医療用消毒剤として、また飲料工場におけるペットボトルやプラスチックキャップなどの殺菌工程に用いられてきました。
海外においてはアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアでは「食品添加物」として認可されており、野菜や果物の微生物制御、鶏肉や牛・豚肉の表面殺菌剤として広く用いられてきました。
日本でも長く食品衛生分野への導入が待たれていた過酢酸製剤ですが、2016年10月より新たに食品添加物として認可されました。
これにより、日本への輸入食品への使用はもちろん、日本国内での食品に対する直接の使用も可能となりました。
海外 | 日本 | |
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機器・設備の消毒 | 〇 | 〇 |
食品への添加 | 〇 | × → 〇 |
メリット | 活用事例 |
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毒性成分の残留がない | 食品分野でもとりわけ、カット野菜のように消毒後生のまま食べるような食品にも安心して使用が可能です。 |
有機物存在下でも効果持続 | 一般に食品とは「有機物」の塊です。塩素では汚れやバイ菌を落とす過程で効果が弱ってしまいますが、過酢酸では繰り返しの使用も可能です。 |
芽胞菌にも有効 | 特に食肉には塩素では退治できない「芽胞菌」と呼ばれる消毒剤耐性の強い細菌が付着している危険がありますが、過酢酸には消毒効果が見込まれています。 |
ステンレスを腐食しない | 塩素系消毒剤が起こしてしまう「次亜焼け」と呼ばれる腐食を、過酢酸は起こさないため、機器洗浄時にも安心です。 |
過酢酸は使用場面に応じて最適な濃度が定めらており、また食品衛生分野では使用濃度の上限値も定められています。このため濃度管理は非常に重要となりますが、従来は高額かつ操作が複雑な電流滴定機器や、手軽ではあるものの正確な測定が困難な試験紙タイプしか測定器が存在しませんでした。
鈴研の測定キットは日本、アメリカ、ヨーロッパ他主要国で特許取得済みの独自技術により、 安価・簡易・正確に過酢酸濃度の測定が可能です。